初演から100年―英国最高のコンチェルトに新たな呼吸が吹き込まれる 心の奥底を震わせるチェリストが描き出す哀切と希望のエルガー
宮田 大 エルガー:チェロ協奏曲 ヴォーン=ウィリアムズ:暗愁のパストラル
2019年10月30日 COCQ- 85473 (UHQ-CD)
日本人として初めてロストロポーヴィチ国際コンクールで優勝し、国際的な活動を繰り広げるチェリスト・宮田大。待望の初コンチェルト録音となる今作はグラスゴー(イギリス)にて、名匠トーマス・ダウスゴー指揮・BBCスコティッシュ響との共演で、エルガーのチェロ協奏曲を収録。初演から100年を迎えるチェロ屈指の名曲を、気品と哀切に溢れる、宮田大の圧倒的な演奏で歌い上げる。
「高貴さ」と、振幅豊かな感情表現とを圧倒的な説得力で 両立させた、紛うこと無き新時代の名演と言えるだろう。
矢澤孝樹/音楽評論
宮田大の素晴らしいチェロが崇高な美を思わせる音色で 曲の最後を締めくくる。まさにこの曲にふさわしい理想的な 名演だと思う。
デイヴィッド・マシューズ/作曲家
エルガー:チェロ協奏曲 ヴォーン=ウィリアムズ:暗愁のパストラル
宮田大「エルガー:チェロ協奏曲」レコーディング・ドキュメント
Dai Miyata -Recording of Elgar Cello Concerto
宮田大
2009年、ロストロポーヴィチ国際チェロコンクールにおいて、日本人として初めて優勝。これまでに参加した全てのコンクールで優勝を果たしている。その圧倒的な演奏は、作曲家や共演者からの支持が厚く、世界的指揮者・小澤征爾にも絶賛され、日本を代表するチェリストとして国際的な活動を繰り広げている。

2009年にスイスのジュネーヴ音楽院卒業、 2013年6月にドイツのクロンベルク・アカデミー修了。
チェロを倉田澄子、フランス・ヘルメルソンの各氏に、室内楽を東京クヮルテット、原田禎夫、原田幸一郎、加藤知子、今井信子、リチャード・ヤング、ガボール・タカーチ=ナジの各氏に師事する。
これまでに国内の主要オーケストラはもとより、パリ管弦楽団、ロシア国立交響楽団、フランクフルトシンフォニエッタ、 S.K. ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団、スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団、プラハ放送交響楽団、ハンガリー放送交響楽団、ベトナム国立交響楽団などと共演している。また、日本を代表する多くの演奏家・指揮者との共演に加え、小澤征爾、E. インバル、 L. スワロフスキー、 C. ポッペン、 D. エッティンガー、V.ポリャンスキー、V.シナイスキーをはじめとした指揮者や、 L. ハレル、 G. クレーメル、 Y. バシュメット、 M. ヴェンゲーロフ、 A. デュメイなどの奏者と共演。

「小澤征爾さんと音楽で語った日~チェリスト・宮田大・25歳~」(芸術祭参加作品)、「カルテットという名の青春」「NHK ワールド “Rising Artists Dai Miyata”」などのドキュンメント番組のほか、「クラシック倶楽部」「らららクラシック」「題名のない音楽会」「報道ステーション」「日経スペシャル招待席~桐竹勘十郎 文楽の深淵」「徹子の部屋」など、メディアにも数多く出演している。また、チェロ奏者では異例のサントリーホール、ミューザ川崎など2,000席以上のホールが満席になったことでも話題を呼んだ。

第6 回齋藤秀雄メモリアル基金賞、第 20 回出光音楽賞、第 13 回ホテルオークラ音楽賞を受賞。第74回日本音楽コンクール優勝。第 35 回江副育英会奨学生。ローム・ミュージックファンデーション奨学生。
近年は国際コンクールでの審査員や、2019年ロームミュージックセミナーの講師を務めるなど、若手の育成にも力を入れている。

使用楽器は、上野製薬株式会社より貸与された1698年製A. ストラディヴァリウス“Cholmondeley”である。
トーマス
BBCスコティッシュ交響楽団の首席指揮者、シアトル交響楽団の音楽監督、トスカーナ管弦楽団(ORT)の名誉指揮者、デンマーク国立交響楽団の名誉指揮者、スウェーデン室内管弦楽団の桂冠指揮者。枠にとらわれない創造性と革新的なレパートリーで知られ、熱狂的なコンサート公演や広範囲に及ぶ楽曲の録音の数々で高い評価を受けている。特に楽曲の音楽的な文脈に関心を持ち、民謡や典礼音楽が古典派クラシック音楽の作曲家の管弦楽曲に及ぼした影響について探求している。

BBCプロムス、エディンバラ国際フェスティバル、リンカーンセンターのモーストリー・モーツァルト・フェスティバル、ジョルジュ・エネスク国際音楽祭など世界各地の国際音楽祭に、 欧州、米国、アジア諸国の主要オーケストラと共に定期的に出演している。また、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団、ウィーン交響楽団、ヨーロッパ室内管弦楽団、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、フィルハーモニア管弦楽団の客演指揮も務めている。北米では、クリーヴランド管弦楽団、ニューヨーク・フィルハーモニック、ボストン交響楽団、フィラデルフィア管弦楽団、ロサンジェルス・フィルハーモニック、トロント交響楽団、モントリオール交響楽団を指揮。アジア諸国とオーストラリアでは、新日本フィルハーモニー交響楽団、香港フィルハーモニー管弦楽団、東京都交響楽団、シドニー交響楽団、メルボルン交響楽団を指揮している。

CDのリリース作品としては、BBCスコティッシュ交響楽団とのシベリウス「クレルヴォ」の録音、批評家に絶賛されたシアトル交響楽団とのマーラー交響曲第10番(デリック・クック校訂版第3稿)の録音などがある。その他の録音には、 バルトークの管弦楽曲集(BBCスコティッシュ交響楽団)、ニールセンの交響曲集(シアトル交響楽団)、J.S. バッハのブランデンブルク協奏曲と6つの新曲委嘱作品(スウェーデン室内管弦楽団)、ブルックナーの交響曲集(ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団)等がある。これまでに参加したCDは70作品を超え、その中にはベートーヴェン交響曲全集、シューベルト交響曲全集、シューマン交響曲全集、ルーズ・ランゴー交響曲全集などがある。

デンマーク女王から騎士道の十字架を授与され、スウェーデンのスウェーデン王立音楽アカデミーに選任される。関心は音楽に留まらず、建築、風景、とりわけ遠隔地の生活文化に強い興味を持っている。
Photo by Thomas Grøndahl
BBCスコティッシュ交響楽団はイギリスを代表するオーケストラとして、その幅広い活動が注目を集めている。
1935年に設立され、2006年からグラスゴーのシティ・ホールを本拠地としており、近年オスモ・ヴァンスカ、イラン・ヴォルコフ、ドナルド・ラニクルズ、そして2016年以降就任のトーマス・ダウスゴーという4人の首席指揮者の元で、幅広いレパートリーを築き上げてきた。ここ最近での特徴としては、クラシック音楽作品をフォークミュージシャンや学生、合唱とコラボレーションする「コンポーザー・ルーツ」シリーズをはじめとしたコンサートでの新たな取り組みや、BBCの委嘱で現代を代表する作曲家が作品を書く「スコティッシュ・インスピレーション」シリーズ、ツアーやレコーディングでの意欲的なプログラムといった活動が挙げられる。当初は小規模のスタジオ・アンサンブルとして始まった同交響楽団は、BBCのラジオ番組に出演し、クラシック音楽の小曲から交響曲まで幅広い演奏を行ってきた。1947年に創設されたエディンバラ国際フェスティバルに時折出演するなどスタジオ外での活動が増えて知名度が上がった。近年はスコットランド国内全域で演奏活動を行う他、BBCラジオ3、BBCラジオ・スコットランド、BBCテレビ及びオンライン放送番組にも出演するなど多忙な演奏活動を行っている。国外では、欧州の主要音楽都市で数多くの公演を行い、米国、南米、中国、インド、日本等へもツアーを行っている。
また、ロイヤル・フィルハーモニック協会賞、 グラモフォン(英国のクラシック音楽専門誌)によるグラモフォン・アワードを4回受賞している
Newアルバム『エルガー:チェロ協奏曲/ヴォーン=ウィリアムズ:暗愁のパストラル』
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高貴にして感情的(エモーショナル)な挽歌
~宮田大のエルガー:チェロ協奏曲
矢澤孝樹(音楽評論家)
 冒頭の数小節で、奏者のその曲へのスタンスや熱量がたちどころに測られてしまう協奏曲がある。言うまでもなく、この盤で宮田大が演奏しているエルガーの《チェロ協奏曲 ホ短調》作品85だ。独奏チェロが一切の伴奏無しで、いきなり聴き手の胸を貫く重音を直球で投げ込むこの冒頭に、いささかでも逡巡や余力を残していたなら、ここから始まる感情の劇は十全に機能しないまま終わってしまう。独奏チェロは、ベートーヴェンの第5交響曲の冒頭主題にも比肩する重み(しかも「感情」の量はより多い)を、ひとりで背負わねばならないのだ。
 パブロ・カザルスが「ドヴォルザーク以降に書かれたチェロ協奏曲の最高傑作」と呼んだこのエルガー晩年の傑作にして実質的な「白鳥の歌」(理由は曲目解説で詳述)は、とりわけひとりのチェロ奏者の名と強く結びつけられてきた。ジャクリーヌ・デュ・プレ、28歳にして多発性硬化症のために演奏活動の停止を余儀なくされ、42歳で世を去った悲劇の名チェロ奏者である。弱冠16歳でのプロ・デビューにおける演奏曲目であり、その後の2度の公式録音をはじめ数々の名演によって彼女の代名詞となったのがエルガーのチェロ協奏曲だった。その、楽曲の悲劇性と情念そのものに化身した演奏は、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチに自らのレパートリーからはずす決断をもたらすほどの衝撃をもたらし、以後もこの名作を演奏・録音する数多のチェロ奏者にとっての桎梏(しっこく)となった。

 しかし、当盤の宮田大の演奏は、まさに冒頭の数小節から、デュ・プレとは異なる風景を拓く。情念の噴出で聴き手の胸倉をつかむのではなく、深い呼吸で一気呵成に弾き切られる和音が、逆に広大な空間へと聴き手を解き放つのだ。
決め手となるのは情念の多寡ではなく、楽譜の指示に対するスタンスである。デュ・プレの演奏は曲に対する圧倒的な「憑依力」と引き換えに、いささかの楽譜からの逸脱もまた否定できない。この曲の冒頭で言うならば、エルガーがnobilmente(高貴に)と指定していることを、デュ・プレの演奏だと、ともすれば忘れがちになる。宮田大は、感情表現の強力な武器であり(かつ諸刃の剣ともなる)ヴィブラートを抑制し、和音そのものの美しさを十分に引き出し、nobilmenteを十分体感させながら(それはむしろやや忘れられがちなピエール・フルニエの名演に連なる系譜かもしれない)、かつストラディヴァリウスの名器を、地鳴りのような低音を基盤に存分に鳴らしきることで、響きと感情を雄大なスケールの中で融合させる。ここで保障された広大な空間が、楽曲を単なる慟哭の歌に終わらせず、1918年という大きな時代の変化のただ中にすっくと立つ、後期ロマン派、そして英国でそれを支えたヴィクトリア~エドワード朝時代ヘの気高い白鳥の歌としての曲の姿を、
輝かしく照らし出す。エルガーがいかに豊かな音楽的創意をこの曲に込めたか、宮田大のアーティキュレーションやフレージングへの細やかな配慮に富む演奏はそれを存分に伝えてくれる。ソナタ形式の定型に当てはまらない第1楽章が、同じ重音の響きで始まるJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番第1楽章をモデルのひとつにしているのでは?と思わされたのはこの演奏が初めてだったし、第2楽章の疾走感と明晰さのバランスも素晴らしい。第3楽章には宮田大という音楽家が持っている「高貴な歌謡性」の美質が存分に発揮されている。そして、このところスウェーデン室内管弦楽団での初期ブルックナー交響曲や、BBCスコティッシュ交響楽団を率いてのシベリウス:《クレルヴォ交響曲》などで分析力と表現の大胆さを両立した瞠目の名演を聴かせているトーマス・ダウスゴーが手兵BBCスコティッシュ響と共に、とりわけ終楽章においてチェロとみごとに方向性を一致させた当意即妙の「室内楽」を聴かせる。これは単なる比喩ではなく、この時期のエルガーの他の大作が室内楽曲であることを考えれば事実なのだが、管弦楽がこの曲においてはかつてのエルガーの分厚い豊麗さをかなぐり捨て、チェロの親密な対話相手を務めていることを(必要とあらば爆発力でチェロに挑みかかることも)、ダウスゴーは実感させるのだ。

思い返せば、21世紀に入ってから、この曲はデュ・プレの重力圏から逃れようという秀演の録音が相次いでいた。クライン、ガベッタ(2種)、ヘッカー、ケラス、ワイラースタイン等々…。その中にはいわゆるHIP(Historically Informed Performance)的な発想に基づく「ブラッシュ・アップ」の試みも含まれているが、こうした積み重ねの先に現れた宮田大とダウスゴーの演奏は、精細な楽譜の読みによって実現される「高貴さ」と、振幅豊かな感情表現とを圧倒的な説得力で両立させた、紛うこと無き新時代の名演と言えるだろう。
あたかもマーラーの交響曲第6番終楽章のハンマーのごとく再帰する、冒頭のいわば「運命の主題」が終楽章の最後に出現するとき、そこにもはやnobilmenteの指定は無い。そして宮田大もまた、冒頭とは異なる激しさでその主題に臨むが、それこそが「正しいバランス」なのだ。怒涛の如く終結した協奏曲の追悼曲のように、ヴォーン・ウィリアムズ/マシューズの《暗愁のパストラル》が仄暗い叙情を聴き手の心に広げてゆく。みごとなひとつの時代への挽歌である。そしてそれは演奏の力によって、未来を指し示してもいるのだ。
宮田大「エルガー:チェロ協奏曲」
レコーディングレポート
 宮田大のチェロを聴くと、様々な風景が浮かび、自分の中に眠る感情が喚起される。 いつの間にか、楽器の存在は消え、彼自身が語りかけているように感じる。それは、決して押しつけがましいメッセージではなく、限りなく優しく聴き手を包んでくれる。
 宮田大の音楽に潜むそんなマジックは、多くの人を魅了し、彼のコンサートに足を運ばせる。

 ただ、録音となると話は別である。観客のいないホールで、後に残る完全なものを求めて行われるセッション。どちらかというと、録音は好きではないと言っていた彼の、それも初めてのコンチェルトレコーディング。果たして彼のあの音楽は録音でも残せるのだろうか。

 エルガーのチェロ協奏曲という、エルガー晩年の傑作。品格と多様な感情の振幅を両立した作品は、クラシック音楽の素晴らしさを味わわせてくれる作品であり、宮田大の魅力を存分に発揮できるレパートリーである。トーマス・ダウスゴー指揮のBBCスコティッシュ交響楽団という最高のパートナーを得て、デュプレの名盤を含めた、これまでの数多ある名録音に比して、残す価値のあるものが録れる確信はあったものの、音楽は生き物であり、大きな期待ととともに、油断はできない気持ちも抱えながら、グラスゴーに向かった。

 8月24日、グラスゴーは、天気も良く、東京から来た我々にとっては、乾いた空気が気持ちいい。初日は、夕方から指揮者との打合せで、BBCスコティッシュ響の本拠地であるシティホールに赴く。
 通常、コンチェルトのレコーディングは、本番のセッションの前に、指揮者と作品の解釈について打合せをする。内容は指揮者やソリストによってそれぞれだが、大体の場合は、軽く楽器を弾きながら、ソリストがどこをどう弾きたいか伝え、指揮者と意見交換する。コンチェルトの録音は、主役はソリストであり、指揮者はその解釈に寄り添いながら、如何にいい作品にするかを努力する。とはいえ、オーケストラに指示するのは指揮者であり、その存在は決して小さいものではない。ソリストは当然として、指揮者、オーケストラのそれぞれの熱意が、その録音の成功を左右する。
 ホールに現れたダウスゴー氏は、まず音を出そう、ということで、ステージに行き、自分は指揮台に立ちタクトを振りながら、宮田大はそれに合わせて演奏を始める。
 最初は、大事な部分を抜き出して確認していくのかと思っていたが、飛ばす気配はなく、結局4楽章全てを、途中止めながらではあるが、演奏した。後で行ったインタビューで、ダウスゴー氏は、「リハーサルで最初に演奏を聴いた瞬間に、彼は、複雑な感情全てをひとつの美しい音楽に融合されることができる音楽家だと感じた」そうだが、その彼の感動が、リハーサルを通じて感じられた、濃厚な時間だった。
翌日、いよいよ録音初日。指揮者との信頼関係は築けたものの、一筋縄では行かないのがオーケストラである。ましてや自国の作曲家であり、嫌というほど演奏しているエルガーの協奏曲。
 一番緊張するのが、サウンドチェックが終わった後の、最初のランスルー(楽章を通して演奏すること)である。
 しかし、宮田大が最初の導入部分を弾いたとき、成功を確信した。この曲は、導入部分で決まると言っても良いほど、あのテーマに全てが込められている。オーケストラは否が応でも熱量が上がり、一気に1楽章を弾き終えた。オーケストラから起こった拍手。ダウスゴー氏が語っていたように、それは心からの賛辞だった。
 その後は、全てが順調に行った。宮田大の音楽に心から惚れ込んでくれた指揮者とオーケストラは、テイクを一通り録り終えても、「ダイは満足か?」「気になるところはないか?」と、できる限りの時間を使って、より良いものを一緒に作り上げようとしてくれる。自分たちにとっても、とても大切なレパートリーであるこの曲の、これ以上ない録音ができているという手応えを感じてくれていたようで、休憩のたびに賞賛の声が聞こえた。

 極めて濃密な2日間のセッションを終え、オーケストラの理事長とダウスゴー氏との軽い打ち上げ席では、早くも現地での共演の話が持ち上がり、今後の新しいプロジェクトの話で大いに盛り上がった。
宮田大の音楽の力が、その真ん中にあった。

 彼の音楽によって喚起される様々な風景や感情を味わっていると、良く言われる「想い」や「込められたメッセージ」という言葉が、薄っぺらく思えてくる。
 宮田大は、練習で緻密に音楽を作った後、コンサートの前には一回自分を無にして、演奏の場で起きた感覚を大切に一期一会の世界として感じ、自分の言葉として表現しているという。そこには意図された予定調和ではない、生命が宿っているのである。
 今回のアルバムには、その記録を残すことができた。

 宮田大自身がインタビューでも語っているように、聴いた方も、その時の気持ちや感情に音楽が重なっていくという、一期一会の体験を味わっていただければと願っている。
宮田大/Dai Miyata
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トーマス・ダウスゴー/Thomas Dausgaard
BBCスコティッシュ交響楽団/ BBC Scottish Symphony Orchestra